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コンサルティングマインドを身につける

中小企業診断士は、中小企業に対して経営診断・助言を行う専門家であり、 経営コンサルタントとして、国が認める唯一の国家資格である。これにふさわしい姿勢・心構えを身につけるために、本書をお勧めしたい。

 

ビジネスパーソンの自己向上・自己研鑽

グローバル化、高度情報化、技術革新、競争激化に対応して企業が生き残っていくためには、社員一人ひとりが、自己実現へ向けて自分を見失うことなく、自分に確信をもち、新たな自分を創るために、日々の自己啓発、自己研鑽を通しての自己向上が必要になってきている(26ページ)

 核心を突く言葉は時間がたっても色褪せない。ここでは企業の生き残り方として書かれているが、いちビジネスパーソン・企業人としての生き方の道標とも感じる。

自己啓発・自己研鑽の形は人それぞれだが、中小企業診断士を目指すことは、多くのビジネスパーソンにとってプラスに働く。経営理論や財務会計をはじめとした広範な試験範囲はもちろん、ビジネスパーソンの基盤ともいえる、論理的思考力や文章作成力を鍛えることにつながるからだ。

ちなみに、著者は自己研鑽を忘れたらコンサルタントとして失格である、と述べている。これには大いに賛成であり、いちビジネスパーソンにおいても、同様のことがいえると考えている。

特に企業のマネジメントを担う管理職に強く求めたい。ハーバード・ビジネス・レビュー(以下、HBR)の記事「部下の仕事の満足度は上司の専門技能に左右される(2017年2月27日)」を参照すると、部下の職務満足度や幸福度は、上司の専門性に大きく左右されるという。つまり、上司は、カリスマ性や組織をまとめる能力のほか、自社の事業において真のエキスパートでなければならないということだ。

 

自分のビジョンの達成のために企業という組織を活用する考え方に立たねばならない。企業という組織を活用できるためには、自らの意識・能力を高めなければならない。(39ページ)

自分のビジョンというのは、1年以内に達成するのか、あるいは10年後の目指すべき姿といった時間軸によって様々である。これを明快に語れる人間は少ないと思うが、企業を自己実現の場として活用するというマインドは持っておく必要があると考える。

 

自己向上意欲を刺激するのに有効なものとしては、1.社内ライバルの存在、2.質の高い勉強会(ネットワーク)の参加、3.バラエティに富んだ本の多読、などがあげられる。(160ページ)

中小企業診断士協会に所属し、各研究会に積極的に参加することで、上記2は達成可能である。この点からも、中小企業診断士を目指すことは有意義といえよう。

 

そして今、ビジネスはコンサルティングに変わろうとしている。(中略)戦略的思考をもち、目的に向けての行動力が計画的に実行されるスタイルという意味のコンサルティングが求められている。(194ページ)

ジョブからビジネス、そしてコンサルティングへ。それは、コンサルティング会社に就職・転職するといった形式的なことではなく、各人のマインドの問題である。私の認識する範囲において、所謂仕事ができる人間というのは、よくよく考えてみると全員が上記に該当しているような気もする。

 

 

中小企業診断士実務補習に向けた示唆

社風を創り上げるのは、社員一人ひとりのマネジメント上の意識と能力である…(43ページ)

企業は人。使い古された言葉だが普遍的である。中小企業は総じて人材が不足している傾向にあり、必然的に社員一人ひとりの活躍が重要である。

 

モチベーションとは、人が気づき、それによって個人の目的・目標を見つけ、そして行動することを意味する。(65ページ)

目的化とは、存在すべき企業の価値決定そのものである。目標は、ターゲットであり目的ではない。企業は目標よりも目的が大切である。(98ページ)

中小企業診断士実務補習において、言葉の定義が曖昧であったことから、苦労した場面があった。メモ書きとして残す。

クープマンの目標値(69ページ)とダグマー方程式(71ページ)は記憶しておこう。シェアの構造の分析における指標として活用できる。数値分析においては、業界平均や同業他社といった外との比較により客観視することが肝要である。

99ページの課題ツリーは、営業戦略における課題設定のお手本のようである。この課題ツリーを、財務、人事、原価管理・生産管理、情報化においても展開し、診断報告書の骨子となる。

 

有能なコンサルタントとは、その特殊性に惑わされずに、本質を見極める能力を持っている人のことである。(中略)限りなく核心に近いところに仮説を設定できるかどうかの能力によって、切れるコンサルタントかどうかが評価できる。(183ページ)

業種や職種、売上・利益規模、組織・役員構成、資本関係、沿革、上場か非上場か、同族会社か否か、これらの視点から企業像のイメージをつかみ、自分なりの経営課題の仮説をもって社長インタビューに臨む必要があるとの示唆。

先日の中小企業診断士実務補習の社長ヒアリングにおいて、十分な成果を得られなかった身からすると耳の痛い話である。

白紙の状態で得る情報と、仮説の検証という目的をもって得る情報では、企業の核心を突くという点において大きな差を生むという。